バラの…

この事は以前も書き込みいたしましたが
ある映画のワンシーンでとても素敵な話がございました。

ギリシャの小さな田舎町。

ある初老の夫婦が
医者の所に診察に来て

夫の方が
「小さい頃から右耳が聞こえない」と、言った。

医者が診察してみると
右耳にドングリが入っていた。

ドングリを取り出すと
夫は「とてもよく聞こえる!」と
大喜びで帰って行った。

しかし
一ヶ月程すると
夫だけが医者の所に来て
ドングリをもう一度、耳に戻して欲しいという。

医者が理由を聞くと

「妻が1日中ガミガミと口うるさいから
聞こえない方がましだ。」と、夫が言う。

すると医者は

「毎日の畑仕事の帰りに
道端で咲いている花を一輪積んで
奥さんに持って行ってあげるんだよ。」

と、言ったわけです。

いい話だな…と、思いました。

さて…
開業当時から通って下さっているSさん。

とても心の優しい愛妻家ではあるのですが
いかんせん、恥ずかしがり屋さんなんですね。

「うちのクソババアが…」と、
奥様の事をノロケながらの愚痴を言う。

先日、
「Sさん。クソババア、クソババアって言いますけど
一度でも奥様に『ありがとう』とか『いつも悪いな』とか
言った事あるの?」と、言うと

「そんな事言えるかよ!」と、恥ずかしそうな顔をした。

「って事はSさんがクソジジイだよ。」と、言って
ドングリの話をしたんです。

「私に言わせて貰えばですよ…、
Sさんの奥様は、こんなクソジジイに
何十年も連れ添ってくれているわけですからね!
どーせ、Sさんは奥様に対して
『飯!』『風呂!』しか言わないんでしょう?
仮に奥様が”クソババア”だとすれば
そういう風にしたのはSさんだね。
だから
『ありがとう』は言えなくても
バラの一輪でも買って、持って帰ったら?」と、言ったわけです。

「そんなもんなんかな…」と、言いながらSさんは帰りました。

さて…その翌週Sさんは治療にお見えになったわけですが

「先生に言われた通りにさ、さっそくバラを買ったんだけど
ちっともあいつは嬉しそうじゃなかった…」と、言うわけです。

おかしいな?と、思い
詳しく伺うと

Sさんは翌日、何も言わずに奥様を連れて
ホームセンターの園芸コーナーに行き
鉢、土、肥料…そしてバラの苗木を購入し
家に戻り、鉢に苗木を植えて
部屋に置いたのだそうだ。

奥様にしてみればですよ、
「お父さんが今度は園芸でも始めるのかしら。」と、思ったに違いなく
嬉しそうな顔をするわけがない。

奥様に感謝に気持ちを込めて
”バラの花を一輪”と申し上げたわけで
ホームセンターの園芸コーナーでのバラの苗木だと
ちょっと違うんだけどな…とは思いました…が

その不器用さがとても微笑ましく
ドングリの話の翌日に
さっそく行動に出たSさんの
レスポンスのはやさには
素晴らしいな…と、思いました。

なんだかんだといっても
ラブラブの熟年ご夫婦でございますな。